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競走馬飼料として多用されているゼラチン、コラーゲンとアミノ酸の補給を目的とした純品100%タイプゼラチンは、 予防医学の素材としても重要な物質です。
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第1章・第1話へ

□ 第2章 □

(第1話)運動前後の管理の基本

(第2話)骨疾患とその管理

(第3話)筋・腱・靭帯の疾患と管理

(第4話)年齢別・ライフステージ別運動器管の管理

(第5話)馬の運動器系における検査・診断法について

(第6話)馬の栄養と骨格筋・筋肉管理の基本

(第7話)競技やレース期間中の飼養・栄養管理

(第8話)出走・競技前の飼料給餌について

(第9話)出走・競技後の飼料給餌について注意すべきこと!!

(第10話)強い競走馬・競技馬を目指す時に何が必要か?

(第11話)人馬一体のなかで活躍する馬を作るための提言・纏め

(第2話)骨疾患とその管理

1)馬は骨疾患が多いことから骨の働きを先ず知ることから管理・予防が始まる
=体には無くてはならない5つの役割を担っている骨組織(骨は本来的には動物の食と性の求めに応じた組織である)
@ 体の支持・支柱としての働き。
A 関節をつくり、筋肉の動きに応じて運動器としての働き
B 幾つかの骨を組み合わせて骨の容器をつくり、大切な臓器・器官を保護する働き。
C 骨髄での造血機能の働き。
D 生命に重大な影響を与えているミネラルの恒常性を維持する働き。

2)一般的に競走馬・競技馬の運動器障害の予防を考えた場合
@ 各馬体の個体ごとの特徴を知るために獣医師の整形外科的メデカルチェック【アライメント;肢勢、腕節や飛節
  などの骨配列・並列
など。タイトネス;筋肉の柔軟性や硬さ。ルーズネス;関節の弛緩を主体に
  各種運動機能のチェック】を早めに受け記録しておくこと
A 日頃から馬体活動の活性化(肉体と精神的な向上)をあせらずにこまめに徐々に行うこと。
B 運動後のストレッチングを欠かさないこと。
C 正しい曳き馬での速い歩行習慣を『人馬共に』体に覚えさせておくこと。
D ランニング損傷の多くは、四肢の運動器管の能力発揮を超えた負荷(オーバートレーニング)によることが多いので
  注意が必要である。

E 負荷は、ランニングの質・量・走行フォーム、筋腱の筋力・柔軟性、蹄鉄、走路の性状などによって決めること。
F 着地衝撃緩和としての走路や走法、蹄鉄の改善・改良を常に心掛けること。
G 走路の傾斜・コーナー走は、傾斜が高い場合は高い側の肢の内側の障害を、低い場合は低い側の外側の肢に障害が
  発症する⇔疾患発生の場合は走路の内外高低を調整すること。
H 腰部の筋障害は、体の柔軟性の低下、脊椎支持筋群の筋力低下、背部筋群の過緊張などで発症する⇔腹筋や腰背部筋
  のストレッチング・マッサージ、人馬の体重のコントロール、栄養に配慮したうえで、胃腸内容物の減量を行うこと。

I 腰部の骨や関節障害は、脊椎の屈曲‐伸展位動作の反復によって椎弓の関節突起間部の疲労骨折(先天性や未だ
  原因不明の骨軟骨症の場合もある)が推測されることから、⇔反復するストレスの減少と筋力の増強に努めること。
  時には休養も必要である。


3)競走馬の運動器疾患・骨折について
@ 競走馬の骨疾患は骨折を含めて24%と跛行に次いで多発している⇔競馬産業界において経済的損失は極めて大きい。
A 骨折の大部分は前肢に多発し、その多くは腕節と球節構成骨に起こっている。
B 骨折には四肢に加わる力学的方向にほぼ一致して骨折線が明瞭に表されている。従って病理解剖では、骨折の状態から原因や要因が推測可能になります。
C 病理学的なわれわれによるJRA総研での骨折の研究で、骨硬化と骨軟骨症病変部(未だ原因の明らかでない病気)から骨折が起り、競走馬独特な骨折パターンを示していることが明らかになりました。
D 骨折は以前に患った病気・既往症との関連が深いことも明らかになりました。
E われわれのJRA総研での骨折研究・調査によってはじめて競走馬の骨折を少なくすることが出来るようになったのです。
F これらの競走馬の骨折実態から、先ずは骨折について考えてみましょう。


左側:競走馬の運動器疾患発症率(%):
骨折や他の骨疾患(管骨骨膜炎や管骨瘤など)を加えて骨疾患として見てみると跛行に次いで多いことが判ります。    
右側:競走馬の四肢における骨折発症:
円(○)の大きいのは発症率が高いことを示しています。前肢の腕節以下の下脚部の骨に多発していることが明確です。


左側図:
骨折像と既往症;典型的な競走馬の第三中手骨骨折像ですが、単純な骨折面を示しています(左上図)
本来の骨組織は関節軟骨に近い部位では海綿状構造であるべきだがコンクリートのような構造・骨硬化になっていること、
また骨組織の一部が壊死(えし)に陥っていて力学的に弱い骨軟骨症病変部(↑印)から骨折が線状に
発症していることが窺えます(右上図と左下図)
さらに、左図下に示したグラフのように骨折は既往症との関連が非常に深い関係にあることが解かります。
特に既往症としては、腕節炎、管骨骨膜炎や管骨瘤、球節炎、屈腱炎などです。
右側図:
骨折線部の骨梁構造:左側は、第三中手骨骨折部位を水平に鋸断(きょだん)した軟]線像だが、明らかに本来構造であるべき
海綿状構造を失った骨硬化部(白色の強い部分)に骨折線がみられます。
右側は、関節面の近くの骨折多発部位である骨硬化部位のレントゲン象を画像解析したものですが、
本来あるべき骨梁(骨に加わって負荷の分散化の役目をしている骨梁・細い網目をした線構造)が少なく、
しかも単純化した線・骨梁が見られます。すなわち、この単純化した部位に負荷が課せられた際には骨梁による負荷の
分散化が出来ずに競走馬特有の単純な斜骨折が発生することになります。因みに人間・高齢者の骨折像とはかなり違います。

4)既往症と骨折との関係について:
@ 競走馬の骨折は、図・グラフでも示したように既に患っていた既往症旧い病気・病変から起こっている症例が病理解剖で明らかになっています。
A その主な既往症の病変は、腱炎であり、関節炎・関節症であり、四肢の運動をコントロールしている末梢神経の病変・変性であり、さらには、四肢に栄養・エネルギーを配布している細い血管の病変などです。


骨折馬に見られる既往症病変:
左側図:骨折馬の慢性腱炎(繋靭帯炎);競走馬で不治の病として恐れられている屈腱炎の組織像だが、骨折馬には
 しばしば多発して見られています⇔腱炎は骨の機能を支えきれずに骨折を助長しているのです。
中間図:骨折馬の神経束;四肢の運動をコントロールしている末梢神経線維束の組織像であるが、
 神経線維の水腫性膨化(水たまり状態)と脱落・消失の病変が見られます。
 馬の肢の運動のコントロールが上手く出来ていないことを示しています。
右側図:関節絨毛の病変;関節絨毛は関節液を作っている組織ですが、慢性関節炎のために絨毛組織が
 軟骨性化生(本来の仕組みを逸脱して軟骨をつくってしまうこと)を示し、正常な関節液を造れない状態になっています
 ⇔クッションの役目をしている関節軟骨の細胞の新陳代謝が上手く出来ない状態で走っていることになります。
 栄養がスムーズに得られないために軟骨層の新陳代謝が上手くいかずに薄くなり骨組織に直接負荷が加わってしまい、
 最終的には軟骨下の骨硬化像になり負荷の分散化が不可能になってしまいまい骨折発症へとつらなります。


左側と中間図:小血管病変;骨や腱、関節組織の栄養を司っている小血管にはこのような小動脈中膜の類石灰化を伴う動脈硬化や
 小動脈の変性壊死像がしばしば観察されます。特に既往症のある骨折肢には多発して観察されます⇔骨や周囲の組織に十分な
 栄養を与えられなかった状態をしめしています。
右側図:新宿御苑のバラ:


競走馬の骨折のメカニズム:
 骨折は上記に示してきた既往症病変と関連して末梢神経障害並びに血管障害による循環障害が骨折肢に発症し、
その循環障害は運動負荷により骨には限局性の骨壊死や骨硬化をもたらし、一方には腱変性・腱炎や関節症を発症させています。
このような既往症・既存病変(骨軟骨症)を有する競走馬は必ずや運動機能の部分的な限局的な失調・四肢の機能不全を起こし、
疾走中の一瞬の外的生物学的行動(手前変換などの騎手からの要請を含めて)を要求された際には生態側・馬側の対応が不可能に
なっていて限局性骨病変(骨硬化や原因が未だ明確でない骨軟骨症の骨壊死病変)からの骨折を発症することになります。

5)若馬に多い管骨骨膜炎(ソエ)について
@ 競走馬の運動器疾患のなかで骨折に次いで14%と多い若馬の「ソエ」について考えてみたい。
A 競走馬として登録された若い馬達に襲い掛かる運動器疾患・管骨骨膜炎・ソエは、トレーニングや調教の際に
  大きな負荷のかかる管骨・第3中手骨に発症する骨膜炎
があります。
B 骨の成熟が不完全で未熟な若馬に過激な運動負荷を課した場合に発症し易い傾向にあります。
C しかも硬い走路で重い騎乗者が乗った場合、加えて管骨の機能をサポートしている軟部組織(筋肉や腱・靭帯)に
  疲労がある場合
に発症することがわれわれのJRA総研での研究で判明しています。
D 管骨骨膜炎のメカニズム・原因が明らかにされたことから、以後、その予防が容易になり、スムーズな若馬たちの
  調教が可能になりましたが、未だ時折発症しているようです。


管骨骨膜炎病変:
左上段:通常のレントゲン象ではキャッチ出来ない骨膜炎の初期像はゼロラジオグラムで検出可能になりました⇔モヤット
 見られる白い部分が初期像です。
左下段:管骨骨膜炎多発部位でのアンギオグラム・血管造影象で、外骨膜側の骨・緻密質の3/1部位で血管の分布が途絶えている
 (内骨膜側・骨髄側から造影剤を注入した軟X線像)。なお、外骨膜側の血管・栄養の分布は皮下組織の血管から得ていて、
 この骨髄側と外骨膜側の血管・栄養のドッキングする部位でしかも力学的な負荷の大きい部位に未熟骨組織が残っています
 (右上段の白く抜けている部位)⇔この部位に分布する最小血管に問題があるのです。
右上段:管骨骨膜炎発症馬の軟X線像で、新生骨膜炎部位は淡い新生骨組織像を示し、その下部に一致して白く抜けた限局巣
 (未熟骨の集まり)が見られます。この力学的に弱い未熟骨巣をカバーするために外骨膜に新生骨を形成していることが
 窺えます。なお、この未熟骨巣は血管造影で示した外側と内側から分布する血管の途絶えたドッキング部位に形成されている
 ことになります。すなわち、骨組織への栄養が不十分になりがちな部位ということになります。特にこの部位に栄養を与える
 細い血管に障害・病変があれば当然のことながら栄養失調で骨細胞に変化が起こっても不思議ではありませんね。
右下段:管骨骨膜炎部位の新生骨は明らかな外骨膜の新生・増生を花キャベツのような象を示しています
 (樹脂包埋薄切HE染色の顕微鏡組織標本)。この表面には皮下組織(細かい神経や血管)や軟部組織があり、
 走ることによってギザギザの出ている新生骨組織の部位に触り痛みを感じることになります。
 馬は跛行・ビッコを引くことになります。


管骨骨膜炎(別名;ソエ)の発症メカニズム:管骨骨膜炎の原因;未熟な若馬(管骨の成熟が不完全)に過激な運動負荷を
 課した場合、しかも硬い走路で重い騎乗者が乗った場合、加えて管骨の機能をサポートしている軟部組織(筋肉や腱・靭帯)に
 疲労がある場合に発症することを示しています。したがって、発症原因として取り上げた事柄については当然ながら避ける
 ことが賢明ですね。

6)筋腱付着部障害(骨付着部炎):
骨には運動器官としての機能を十分に発揮させるために働いている筋肉、腱あるいは靭帯が骨に付着・連続
していますが、この部位に発症する疾患が骨付着部炎と言う疾患です。
 若齢から老齢までのいろんな年齢に起こり、主に運動をすることによって起こる跛行・ビッコで判明することの多い 疾患です。しかも診断にはレントゲン検査が重視される難しい疾患・障害でもあります。
@ この障害は、種々な要因で発症する筋、腱、靭帯の骨への付着部で起こる障害を言います。
A 発症要因には各種炎症性疾患に続発して起こる炎症性、馬で多い運動による若馬への使い過ぎ症候群すなわち
  スポーツ障害による外傷性、老齢馬などにみる加齢性の退行性に三大別される疾患です。


左側図上段:前腕骨を形作っている太い橈骨の浅屈筋を支持している靭帯の付着部に贅骨が形成(↓)された部位の軟X線像です。
 この馬は育成馬で、調教中に脛骨骨折を発症し予後不良と診断され病理解剖に付されました。この症例はいわゆる
 スポーツ障害に分類される外傷性の疾患です。生前には何ら異常として把握されていなかったが病理解剖で初めて判明した
 病変です。恐らくこの病変は前肢に存在していたことによって強い運動中に痛みを伴いバランスを崩し、脛骨骨折を
 発症したものと推察されました。
左側図下段:上腕二頭筋が骨に停止・付着する部位における肉芽形成と贅骨形成です。症例は後躯麻痺、跛行、深管骨瘤などの
 既往症のある馬で、剖検により病変部が特定されました。恐らく、各種既往症との関連のもとに上腕二頭筋の主な作用である
 肘関節を曲げ・屈曲させ、前肢を外前方に引き出す筋肉であることから、スムーズな上腕二頭筋の運動が出来ずに常に異常な
 運動負荷が課されていた結果、発症した筋腱付着部病変であるものと推察されます。
右側図:新宿御苑のバラ

7)骨を丈夫にするための条件
@ 重篤な疾患の多い馬の骨組織を丈夫にすることによって運動器疾患を減らすことが可能となろうと考えます。
  すなわち、
A 馬の屋台骨・柱である骨を先ず以下に示した『順調に発育させるための三大必須条件』のもとに作り上げてから
  『骨を補助している筋肉や腱・靭帯の強化』を、最後に『心臓や肺などの内臓器官』を造りあげることが肝腎な
  ことなのです。
(1)骨組織を順調に発育させるための三大必須条件
@ 正常・健常な骨発育を若齢時から行うこと。
A 適度な運動負荷(骨年齢にふさわしい運動負荷⇔骨の成長具合をレントゲンで骨端線・成長帯を検査し判断する)を
  獣医師と相談のうえ行うこと。

B バランスのとれた栄養の摂取を心掛けること。最近、美浦トレーニングセンターでは、ソエの予防にコバス
  (若馬に限り3倍量)を与える厩舎が増えているそうです。骨を丈夫にするために試してみてはいかがでしょうか。
(2)次いで骨を補助している器官のバランスある強化
@ 骨格筋の強化を行うこと。
A 関節の強化を行うこと。
B 腱・靭帯の強化を行うこと。

次回の第3話には筋肉や腱などの疾患とその管理を掲載する予定です。



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