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第1章・第1話へ
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第3章:馬の栄養管理について

(第1話)基本的な馬の栄養とは何か!!

(第2話)馬の体調維持に必要なミネラルとビタミン

(第3話)実際に使われている馬の飼料とその栄養価について

(第4話)出生〜若馬の飼養管理について1 出生〜離乳まで

(第4話)出生〜若馬の飼養管理について2 離乳後〜育成期の疾病予防対策

(第5話)馬の養分必要量と個体別飼養管理の重要性 1

(第5話)馬の養分必要量と個体別飼養管理の重要性 2

(第4話)出生〜若馬の飼養管理について1 出生〜離乳まで

子馬が生まれた時点から育成馬になるまでの期間の飼養管理・主に若馬のエサの管理や運動そして心理状態について
2回に分けて呟いてみたい。

1.出生時の対応について
@ 牧場関係者は分娩後・産後の手当をした後、分娩馬房には新しいネワラを補給すること。
A 生まれた産駒は母馬の見えるところに置き、母馬を安心させること。
B 寒い日には、産駒を擦ってあげること。
C 母馬は出産後、通常10分ぐらいで起き上がります。
D 産駒は生まれてから雌で平均40分、雄は約65分で起き上がる。
E 産駒は本能的に立ち上がってから30分〜90分で母馬に近づき乳を飲む。
F 虚弱な産駒は人間が親指を使って乳を吸わせるのが良い。
左側:上高地・明神池の早朝(澄んだ空気と水)。
右側:わが家のパンジー。

1)哺乳期の飼養=初乳を飲ませることの大切さ=
@ 産駒が最初に飲む乳は、タンパク質が豊富で欠くことが出来ない重要なものである。これを初乳といいます。
A 初乳にはタンパク質の中に免疫グロブリンが多量に含み、感染症を防ぐために必要不可欠(病気に対する抵抗力を
  つける)なものです。

B 人、サル、イヌ、ネコなどは、母親の血液の中にある免疫グロブリンが胎盤を通して体内に入ってくるために
  出生まえから多少もって生まれるが、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタなどは初乳のみから与えられているので、
  産駒にとっては出生直後の初乳が最も大切なものになります。

C ウマでは、1時間当り約160mlの初乳が分泌されると言われています。
D しかしながら、免疫グロブリンを吸収する産駒の小腸粘膜(腸上皮細胞)の能力は、出生後24時間で殆ど
  消失してしまいます⇔したがってなるべく早く初乳を飲ませることが大切なことになります。
E 一方、初乳中の免疫グロブリン濃度は、分娩後急速に減少するので、生後4〜6時間以内に飲ませることが
  最適な条件となります。

F 虚弱な産駒や母馬が乳を飲ませない・飲めないなどの時は、乳母や初乳バンク(初乳の凍結保存)、
  健康な母馬の凍結保存血清などで対応することが必要となります。
G 子馬が自力で免疫グロブリンを作り始めるのは生後2週齢頃からなので、健康な産駒なら約3ヵ月齢で成馬と
  同じ量に達します。

H 良い初乳は黄色調で粘稠性があり濃厚です。悪い初乳は白く薄いです。
I 子馬の免疫グロブリン(IgGとも書きます)の定量は、簡易なラテックス法というキットで検査することが可能です。
J しかし、初乳を飲むことによって起こる病気として、溶血性黄疸・新生児溶血症があり、子馬の1〜2%に
  発症しています。

K 人間のRh因子によって幼児が胎内で罹患し溶血し黄疸になる病気が、馬の溶血性黄疸では、子馬が母馬の初乳に
  分泌される抗体(子馬が母馬の抗体と一致しない抗体を受け継いだため)を子馬が吸飲することによって子馬の
  赤血球を破壊し、子馬に貧血を起こさせ、重症では死に至ります。
L 予防するには母馬の血清を分娩前に検査(クームステストで検査可能)しておくこと。また、分娩直後の臍帯血を
  1滴+0.9%食塩水4滴+母馬の初乳5滴をスライドグラス上で撹拌し、数分以内の凝固で判定可能ですので、
  ぜひ知っておいてほしい。
M 検査で陽性なら、36時間は授乳させないこと。黄疸が現れたら母馬の赤血球(赤血球を沈殿させ、血漿を除去して
  残った赤血球のみ)を輸血することですが、この行為は獣医師にお願いして下さい。
N 子馬が生まれてから、初めて糞(胎児便)をするのは、生後1〜2時間で排泄されます。12時間経過しても
  排泄されないときは獣医師による浣腸が必要です。
O 最初の排尿は、生後3〜15時間です。平均で牡6時間、牝10時間とされています。

2)馬乳成分と乳量
@ 馬乳の濃度は、分娩時のタンパク質19%が12時間後からドンドン減少し正常乳の2%となります。
A 乳糖濃度は分娩時と変わりがないが、脂肪は正常乳のほうが高い(馬1.8%、ホルスタイン3.5%)。馬乳の成分は脂肪を除くと人の乳に類似していることになります。
B 馬の人口乳としては、牛乳540ml+水270ml+スキムミルク20g+液体蛋白製剤70ml+ビタミン総合剤0.1g+クロルテトラサイクリン250mgの調合で行われています。
C 産駒は生まれた直後は15分間隔で飲み、週齢ごとに20分〜30分と延びていきます。
D 生後1〜2ヵ月は、母乳の栄養源だけで十分です。
E 馬乳は、鉄、銅、亜鉛などが不足している母馬がいるので、子馬に貧血症を発症することがあります。
F カルシウム、リン、ナトリウム、カリウムなどは泌乳期が進むにつれ減少し、乳量も減ってきます。

3)クリープフイード(哺育用配合飼料)
@ 乳量の補完用としてクリープフイードを自由に摂取させることは体重増となり危険です。急速度の成長・体重増、
  DOD
(Developmental Orthopedic Diseasesという発育期の整形外科疾患;骨や関節の疾患を起こす)の誘因と
  なるため、注意しながら与えることが必要です。

4)当歳馬(幼駒)の牧草摂取とボロを食べる行動
@ 12週齢をピークに2週齢頃から23週齢頃までに母馬の糞を摂取する行動が普通に見られます⇒このころは、子馬が
  乾草や牧草などをついばむようになるので、母馬からもらった糞便中の腸内細菌を利用して消化のし難い草等を
  大腸で発酵促進させて栄養・エネルギーを得るための行動なのです。
A 生後3ヵ月齢ごろから良質の乾牧草(イネ科とマメ科の混播)を自由摂取させると良いでしょう。

5)哺乳中の大切な当歳馬の管理・しつけ
@ 飼料・エサは個体別に与えること。
A 生まれたての子馬の蹄底には柔らかい蹄餅がありますが、間もなく無くなります。
B 生まれて、立ち上がってから30分もしないうちに、初回の授乳を行い、30〜90分後には横臥して睡眠をします。
C 初回の睡眠を終え、2回目の受乳をします。
D 生まれて2日目には、天気がよければ母馬とともに放牧すること。
E 放牧のときには、出来る限り早目に無口頭絡をつけ、1名は母馬を左側で引き、1名は子馬を右側に置いて左側で
  引くこと。
馬と人との信頼関係を築く初歩となるので大切な子馬の誘導法・しつけとなります。
F 子馬の教育は生まれてから可能な限り早いうちに始めるのが肝要です。

6)馬の気持ちについて知っておくこと=子馬を上手に扱うために必要=
(1)恐怖心
@ 馬は、記憶力がよいので最初の印象が非常に大切で、恐怖をいつまでも覚えています。
(2)思考力
@ 子馬が興奮している間は思考力がなくなるので、学習効果はあまりありません。
(3)記憶力
@ 痛みに関しては記憶としていつまでも残っています。
(4)群集性
@ 馬は群集性が強く、個別を好みません。
(5)帰厩性
@ 本能として持っています。
(6)ハッピーな気持ち
@ ハッピーなときは、覚えがよい。
左側:上高地・梓川の朝靄。
右側:上高地・梓川からの焼岳。

7)子馬の教育マニュアル・コミュニケーション
@ 子馬は生まれた時から手をかけてやることが後々の馬とのコミュニケーションが上手くいくことになります。
A 先ず、子馬の顔と頭を撫でる⇒口、鼻、頬、頭、項に触れ(唇、耳、項;ウナジは神経が敏感で始めはいやがる)
  ⇒頸、肩、背、胸、腹、尻と撫でていく⇒無口頭絡をつける⇒母馬とともにパドックまで歩かせること。
B パドックまたは放牧地まで⇒歩かせる時は、母馬、人間、子馬との形をいつも崩さないこと。
C 放牧を終えて、集牧し、厩舎へ連れ戻す時もBの基本を忘れないで実行すること。
D 馬の引き手をナス鐶に繋ぐのは母馬だけとすること。
E 1週齢くらいまではボロ布でこすってやること。
F 人間の手で触れるのを鈍感にさせること⇒項や耳に触れる、あるいは耳の孔に指を入れる⇒肢挙げ⇒外界の音に
  慣れさせる(音楽、ラジオ)など。

8)馬にとって大切な放牧の三原則
@ 馬の運動場であること。
A 馬の遊び場であること。
B 馬の栄養供給の場であること。
左側:上高地・梓川と朝靄。
右側:上高地・秋の岳沢湿原周囲の朝靄。

9)幼駒の下痢症を見分けるには
幼駒は下痢をし、発育の障害になることが多いので、その下痢症状を見わけて原因や対応を考えることが大切です。
@ 糊状(のりじょう)の下痢;母馬の発情時の乳を飲んでの下痢。
A 水様性の下痢(白痢);ロタウイルス感染による白い下痢⇔同じ厩舎の子馬に同時に多発傾向がある。
B 細菌性の下痢;大腸菌、サルモネラ菌、クロストリジュム菌などによる悪臭ある下痢症状です。
C 栄養性の下痢;過栄養、人口栄養による下痢があります。
D 広範なスペクトル傾向抗生剤による下痢;治療による抗生物質関連性の下痢があります。
E 寄生虫の感染による下痢;寄生虫感染性⇔特に母馬や同じ厩舎馬の回虫の感染によることが多いので
  注意が必要です。

F 一般に春先の生育の盛んな時期の生草による下痢;初春の青草による硝酸毒中毒や硝酸窒素の多い生草による下痢。

2.離乳
@ 離乳は、大きなストレス(狂騒、声をだして悲しむ、暴れる)になります。
A 離乳の時期は、生後4ヵ月〜6ヵ月の間に行うこと。遅くなるよりも早いほうが良い。
B 離乳時の子馬の平均的な側尺値;
  体高;135〜140cm、胸囲;140〜150cm、管囲;16.0〜17.0cm、体重;240〜280kgを目安にして下さい。
C 離乳の基本;
良く慣れた環境の中で子馬を残しながら母馬を移動させること。
母馬との離別は、速やかに手際よく行い、完全な別れとさせること。
仲の良い子馬と一緒に残すか、少なくとも2頭一緒に置くこと。
D 離乳時は、便秘がちとなり疝痛症状を呈するので、栄養が良く、緩下作用のある飼料を与えること。
  水は自由に飲ませること。
E 母馬の飼料は、離乳数日前から減飼すること。張っている乳房からは搾乳してやること。
F 離乳の精神的ストレスで、発育に影響し、感染病や胃潰瘍に罹り易いものです⇒離乳のストレスを
  最小限にすること。

G 離乳前にストレスを最小限にする条件としては;
子馬の健康状態が良いこと
馴致が良くできていること
クリープフィード飼養に慣れていること
ワクチン接種や駆虫剤投与は、離乳2週間前に済ませておくこと
放牧地の環境に慣らしておくこと
左側:小石川植物園の雨に濡れた紅梅。
右側:上高地・梓川からの朝靄。

1)離乳馬の飼養
@ 離乳から12ヵ月齢までの期間が重要です。
A バランスのとれた飼料が必要です。
B 当歳馬の飼料として利用し易いのは、良いクリープフィードです。
C 離乳時にはグリープフィードを平均2.7kg摂取が良いでしょう。
D 乾草とミネラル(特に食塩)は自由摂取が良い。
E 離乳時は体重の観察を15日〜30日に行い、望ましいボデイコンデションに達するよう穀類や配合飼料で
  調節すること。
F 穀類の給与量は、上限日量を3.5〜4.0kgとし、多量は発育を早め、躯幹と四肢の発達のアンバランスを
  招くことになります。
G 穀類と牧草の配合比率は、70:30程度で、発育進度をみながら穀類で調節すること。
H 子馬が急速に発育する際に、カルシウム、リン、亜鉛、銅のいずれかのミネラル不足があった場合は、
DOD
(Developmental Orthopedic Diseases)の発症要因とする研究者もいます⇒穀類を日量4kg以上与えないこと。
ルーサン乾草のようなエネルギー量の高いマメ科牧草も、生後1年までは体重100kg当り0.5kg以上与えないこと。
  タンパク質は、
牧草に不足している分を穀類(ダイズ粕のようなアミノ酸バランスのよいもの)で補う程度に
  することが良いでしょう。
I 追い込み馬房で離乳馬を集団で飼育すると⇒強い馬が常に飼槽を占領し、弱い馬はいじめられ、
  強い馬は栄養過多となるので⇒個別飼料給与が最も良い。
J 放牧は、離乳馬だけの群とし、1歳馬や2歳馬と一緒に放さないこと。
K 当歳時は、牝牡の区分をする必要はない。牡馬の性成熟は12〜20ヵ月齢(平均15ヵ月齢)、
  牝馬は20〜24ヵ月齢であるから。


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