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□ 第4章 □

(第1話)皮膚の仕組みについて〜1

(第2話)皮膚の仕組みについて〜2

(第3話)皮膚の疾患について〜1

(第4話)皮膚の疾患について〜2

(第3話)皮膚の疾患について〜1

 第1話と2話で皮膚の仕組み(構造とその役割)の基本的な事柄を述べてきましたが、これからは、馬によくみられる皮膚の疾患・病気や稀な疾患等をツブヤキます。
競走馬(JRA)の場合、皮膚疾患に占める皮膚炎(dermatitis)は26%です。
図:競走馬の皮膚疾患発症率(JRAの集計から)
最も多発した皮膚疾患はフレグモーネであり、次いで皮膚炎、蕁麻疹(ジンマシン))、繋皸(ケイクン)でこれらは4大疾患にあげられましょう。


以下、1話や2話で示してある図を参考に見ながら読んでいただくと皮膚病が分かり易く・理解しやすいと思いますよ!!

1)炎症性皮膚病とは
炎症性皮膚病として捉える際には、病名や症状・病態などの基本的な約束事がありますので、それを先ず記述しておきましょう。
(1)湿疹(eczema)の定義:一般に湿疹とは以下のようなことを言うのです。
 病態:
@ 皮膚の表皮や真皮上皮の軽い炎症のことです。
A 皮膚は充血、腫脹し、次いで小結節、水疱、膿疱から最終的には痂皮を形成しますが途中に激しい瘙痒(そうよう;
  かゆい事)を訴えることがあります。
 症状:
@ 急性湿疹の場合;紅班期、丘疹期、水疱期、膿疱期、赤色糜爛期、結痂期、落屑期と順に症状が変わってきて
  最終的には治ります。
A 慢性湿疹の場合;真皮の乳頭層、特に血管周囲に細胞が浸潤し、結合組織の増殖により、皮膚の肥厚や被毛が
  粗剛(そごう)となり、多少の色素沈着を残す場合が多くみられます。

(2)鞍傷(あんしょう・sitfast):
 病態・定義;
@ 鞍具の持続性圧迫によって鬐甲(きこう)部に発生する挫傷(ざしょう;傷口が開いてない)を言います。

 誘因・原因;
@ 馬の体格異常(鬐甲部の過度に高い馬、過低、凹背、平肋など)、痩せている削痩馬(さくそうば)。
A 鞍の形状不良や不適合、鞍下の不良、鞍の装着失宜(しつぎ)。
B 騎乗者の適正など

 症状;
@ 急性期は、局所の熱感、浮腫、鋭敏な圧痛。時に鬐甲腫(鬐甲部;きこう部位の腫れ)を形成。
A 慢性期は、脱毛、皮革様の痂皮(かひ;かさぶた)を形成し中央部の壊死や潰瘍を形成する⇒鬐甲腫・
  瘻管(ろうかん)形成(鞍傷に継発し、時に細菌や寄生虫感染し膿が流れ出し、第4〜7棘突起部にある粘液嚢の炎症
  へと波及・重症になってしまう)。
B 真皮にまで侵された顕著な病変・障害馬は、最終的には損傷部に限局性の白毛の発生・刺毛(さしげ)となります。

 処置;
@ 誘因・原因の除去。
A 挫傷の対処療法。


2)皮膚炎について
(1)ウマの湿疹:
専門語では水疵(すいし)といいます:
 病態・定義;
@ 四肢の下部、特に膝、飛節の下方に特に発する湿疹を総称して言う言葉です。
A 湿潤(しつじゅん)で不潔(ふけつ)な厩舎、寒冷刺激などが原因となります。
B 皮膚は肥厚し、小さな水疱(すいほう)を形成し、湿潤、脱毛、局所性熱痛があります。慢性になりやすいです。

発生部位による特別な呼び名・病名があります:
@ 繋皹(けいくん);主に削蹄の失宜・失敗によって起こります。皹(ひび)、皸(あかぎれ)のことを言います。
  繋の下方で蹄球との間に相当する繋凹部(けいおうぶ)の皮膚が侵された場合は、歩行で皮膚が可動するために治り
  づらい疾患です。競走馬(JRA)の皮膚疾患中、15.8%の発症率で高い病気です。
A 膝皹(ひざひび)および飛節皹(ひせつひび);膝皹は膝関節(しつかんせつ;後膝・あとひざ)の後面に、飛節皹は飛節
  (ひせつ)の屈面に起こった湿疹を言います。慢性(まんせい)では鱗屑型(りんせつがた;皮膚の角質層が肥厚してフケ
  のようになっている状態)を呈します。
B 長毛部の湿疹;鬣(たてがみ)や尾根部の長毛部に発生する湿疹です。皮脂に富んだ粘稠液(ねんちょうえき)を分泌し、
  激しい瘙痒(そうよう)があり、治り難い皮膚病です。
C 脂漏性湿疹;体幹や頭頚部に発生する湿疹で、光沢ある円形痂皮(かひ;カサブタ)形成(けいせい)と脱毛があります。
D 急性湿疹、丘滲、水疱性湿疹;頭部、背部、腰部、肩部、などに発生し、特に背腰部に多く、皮膚の汚垢(手入れ
  不良)と降雨が伴って起こる湿疹です。
E 夏癬(かせん);北海道や東北地方に多発する湿疹で、晩春に初発し、夏季に病勢が悪化し、冬季には軽快し、本州
  では11月頃に急に治ります。病馬は翌年再発します。病馬は瘙痒のため半狂乱となり、患部(長毛部)を物に擦る
  (こする)ため、湿疹から漿液の滲出、最終的には象皮病(象の皮膚)様となります。原因は糸状仔虫寄生による刺激と、
  吸血昆虫の吸血によるアレルギー性湿疹であろうとされています。ウマのアレルギー性皮膚炎とも言われています。


<左図>:繋皹の肉眼像;乾性と湿生の混在した繋皹で、繋凹部に発症した湿疹性で疣贅性に肥厚した皮膚炎で、2歳5ヵ月齢の
サラブレッド競走馬です。運動後の丁寧な水洗いと拭き取りが大切です。特に冬期に凍結防止剤を路面に散布した場合は丁寧な
管理が必要です。
<右図>:繋皹の組織像;(JRA総研)
 左側:繋皹:6歳9ヵ月齢。♂、サラ。レースで骨折のため安楽死処置された繋皹馬。
 右側:繋皹:2歳11ヵ月齢。♂、サラ。レースで骨折のため安楽死処置された繋皹馬。

図:皮膚疾患の各種タイプ別模式図;左側から順に皮膚疾患の組織像です(顕微鏡で観察される像から以下のような診断が
  下されることになります)。
*毛包性異角化症;表皮が厚くなる錯角化症で基底層上部の空砲や小窩を形成する。
*膿痂疹(膿疹);表皮の角質層の空砲形成。空砲内に好中球をいれる。
*尋常性天疱瘡;表皮の空砲形成と変性棘細胞の封じ込み。
*尋常性乾癬;表皮と真皮の錯角化症を伴う過角化症、刺細胞増殖と乳頭症。
*紅色苔癬;掻痒性、多角形、青紫色の丘疹で、表皮と真皮の過角化症棘細胞増殖による表皮肥厚。真皮に細胞浸潤。
*神経皮膚炎(慢性湿疹);表皮と真皮の変化で、正常角化性過角化症である。真皮に血管周囲性細胞浸潤がある。
*環状肉芽腫;真皮と皮下の変化で、炎症性反応と線維化。*結節性紅斑;皮下の上部に軽度に盛り上がった結節形成で、血管壁
 の炎症性細胞浸潤と内皮の増殖。陳旧性で異物性多核巨細胞の集積が起こる。

左右図:夏癬(かせん)と思われる皮膚病;病馬は瘙痒(そうよう)のため半狂乱となり、患部(長毛部・尾部)を物に擦り(こすり)、歯で全身のアチコチをかじり、脱毛し、湿疹から、最終的には右図の様に象皮病(象の皮膚)様となっています。
原因は寄生によるものと推察しています。ウマのアレルギー性皮膚炎とも言われています。

(2)皮下組織炎・フレグモーネ(蜂巣炎;蜂窩織炎とも言います)
 病態・定義:
@ 皮下結合組織に発する散漫性化膿性炎で、感染によるが時として筋腱の下、筋間結合組織、骨膜などにも炎症が
  波及します。
A 感染は創傷の大小に関係なく細菌が侵入することによって発病します。侵入・感染門戸が明確でないことも多々
  あります。
B 競走馬(JRA)の場合、皮膚疾患中29.4%と最も高い発症率です。

 症状:
@ 限局性に発した場合は局所の主張、熱感、疼痛、周囲に浮腫を伴い、しばしば組織の壊死により自潰(じかい)排膿
  (はいのう)することがあります。
A 多くは一か所に病巣が限局することなく急激に周囲に蔓延し、広範な部分に熱痛を帯びた腫脹を来たし、一夜にして
  肢の全長に及び歩行不能に陥ります。
B その際には、高熱を稽留、食欲減退、元気消失などの全身症状を伴います。

 病理:
@ 皮下結合組織の黄色膠様化、水腫、出血、時に化膿巣形成、腫脹部の散在性化膿性自潰がみられます。
A 皮下組織は増殖し、日時とともに皮膚が肥厚し、弾力を失い、被毛粗剛、あるいは脱毛してゾウの皮膚のように
  厚くなり、いわゆる像皮様肥厚と呼ばれる状態で後遺症となり残ります。

3)皮膚血行障害
(1) 紅班(erythema):
 症状・病態:
@ 真皮(しんぴ)上層(乳頭層 にゅうとうそう)が充血した軽い皮膚疾患を一般的には言います。
A 皮膚が充血した状態で、指圧で消失、限局性で希に痒(かゆ)みがあります。

 原因:
@ 各種の刺激によって起こります。

(2)蕁麻疹(じんましんhives/wheal):

 症状:
@ 全身の発疹の前に消化障害、発熱などがあります。
A 主に丘疹で、躯幹(くかん)、頸部の皮膚にエンドウ豆大の扁平な隆起が生じます。
B 一両日内に治りますが、希に水疱(すいほう)、痂皮形成(かひけいせい)がみられます。
C 競走馬(JRA)場合、皮膚疾患中20.9%と高い発症率です。

 原因:
@ 外因性として、植物毒(イラクサ、ムラサキツメグサなど)、動物毒(マツケムシ、クヌギケムシ、イラガなど)、
  刺激性外用薬(テレピン油、石炭酸など)、摩擦(まさつ)、外温などで起こります。
A 内因性として、アレルギー体質、消化障害、伝染病、特殊薬品の内服(アンチピリン、ストレプトマイシン、
  ミグレニン、)などで起こります。

図:帯広バンエイ競馬場の第1障碍での力くらべ(ナイター競馬)。


次回は、伝染する厄介な伝染性皮膚病、クロバーやソバガラなどを食べて皮膚病になる飼料疹、寄生虫による皮膚病、
白子・アルビノやイボ等についてツブヤキます。



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