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□ 第5章 □

(第1話)蹄の仕組みと疾患・予防について=蹄のしくみを知ろう1=

(第2話)蹄の仕組みと疾患・予防について=蹄のしくみを知ろう2=

(第3話)蹄の仕組みと疾患・予防について=蹄のしくみを知ろう3=

(第4話)蹄の仕組みと疾患・予防について=蹄のしくみを知ろう4=

(第5話)蹄の仕組みと疾患・予防について=蹄のしくみを知ろう5=

(第6話)蹄の仕組みと疾患・予防について=蹄のしくみを知ろう6=

(第4話)蹄の仕組みと疾患・予防について=蹄のしくみを知ろう4=

4話では、蹄の疾患・病気について述べますが、主に蹄の角質部(蹄壁あるいは蹄甲とも言われる部位)と知覚部位(蹄壁の内側部位)、加えて知覚部や腱疾患などからおこる蹄疾患や変形蹄についても記載します。
第2障碍の頂上を目指している各馬の力走(帯広ナイター競馬)

8.蹄の疾患と予防
*蹄は角質部、知覚部、弾力部、骨部の4部構成からなっているので、この順に記載します。

1)蹄角質部の疾患
*蹄の角質部(蹄鞘・テイショウまたは蹄匣・テイコウとも言う)とは:
@ 皮膚の表皮が角化したもので、知覚部より発生し、蹄の外側の硬い部分である蹄匣をつくり、種々の外力から
  内部の組織を保護している部位なのです。
A 蹄匣は、蹄冠(テイカン)、蹄壁(テイヘキ)、蹄底(テイテイ)、白線(ハクセン)、蹄叉(テイサ)の5部から
  なり、これらの角質部に発症する疾患について記述します。
(1)裂蹄(れってい) hoof crack
病態:
  蹄壁の一部が強い衝撃を受け、通常は角細管(カクサイカン)の方向(蹄冠の皮膚から蹄の地面に向かっている
  細い管)、まれに角細管の方向に関係なく分裂したものも言います。
  *発生部位により、蹄尖裂、蹄側裂、蹄踵裂、蹄支裂があります。
  *分裂の深さにより、表層裂(ヒョウソウレツ)、深層裂(シンソウレツ)に区分されます。
症状:
  表層裂(蹄角質部の裂蹄)は跛行を表さない。深層裂は負重及び去地に際し高度の跛行を示します。
  多くは、縦裂(角細管に平行)、横裂(角細管に直角の場合)、一般に前肢の内蹄踵壁(ナイテイショウヘキ)に
  発症します。
  @ 新しく発生した裂蹄は分裂辺縁が平滑で裂縁は相互に接近しています。
  A 旧い裂蹄は@と逆です。
原因:
  @ 不良肢勢(広踏及び狭踏肢勢、外向肢勢、外弧肢勢など)による肢蹄に対する体重圧の偏りがある場合。
  A 蹄の乾燥や蹄機の障害。治療に長時間を要するので早めの手当てが必要。
  B 装蹄失宜、運動と地面との不調和、外傷、変形蹄(蹄踵狭窄・テイショウキョウサク、蕪蹄・ブテイなど)。
左図:裂蹄;蹄冠裂(テイカンレツ)の模式図。(装蹄学1967 JRA)
中央図:競走馬の裂蹄;7歳5ヵ月齢、牡、両前球節の脱臼(ダッキュウ)と繋靭帯断裂(ケイジンタイダンレツ)で
安楽死処置。 左蹄の蹄冠部からの裂蹄。
右図:裂蹄;蹄負縁(テイフエン)における軽度な例。(競走馬 蹄について1989 JRA)

(2)蹄叉腐爛(テイサフラン)thrush
病態:
@ 蹄叉角質の腐敗崩壊(ふはいほうかい)した蹄。
A 蹄叉部の腐爛(ふらん)と腐敗(ふはい)によって蹄叉の角質が漸次離解し、かつ悪臭を発する蹄病です。
左図:蹄叉腐乱模式図:蹄輪の不正、蹄踵過高。蹄叉中溝の萎縮亀裂。(装蹄学1967 JRA)
右図:蹄叉腐爛および崩蹄(JRA総研)
原因:
  @ 厩舎内の汚れで糞尿によるアンモニヤによって発症。
  A 局所の不潔、湿潤で不潔な寝藁(ねわら)が厩舎内に蓄積、蹄低に汚物の充填(じゅうてん)して起こる場合。
  B 蹄踵壁の過高または鉄臍(テッサイ)や厚尾蹄鉄の装着、蹄叉の多削、蹄低狭窄、素質など。
  C 蹄機(テイキ)を阻害し、蹄叉の発育を妨げる原因←局所が不潔で湿潤、延蹄、狭窄蹄、挙踵蹄、蹄踵の過高等。
症状:
  @ 腐爛(ふらん)は蹄叉中溝に始まり、不潔灰白色で顕著な悪臭ある腐敗性の物質を分泌し、蹄叉は漸次軟化して
    亀裂を生じ萎縮を来たし、蹄壁は凹弯してくる。悪臭、灰白乾酪様の角質の腐敗・崩壊(蹄膿テイノウを見る)。
  A 蹄叉と蹄球が小さくなる。跛行。
  B 異常蹄輪の出現。
  C 原因を取り除き早めに徹底した治療が必要。
(3)蹄踵狭窄・挙踵蹄(厩舎名;ツキアゲ)contracted heel, sheared heels
病態:
  蹄踵の狭窄によって蹄球が上方に隆起した蹄形異常を言う。
  @ 蹄踵狭窄(テイショウキョウサク);蹄壁の傾斜が急で、蹄球と蹄叉が著しく縮小した状態。
  A 挙踵蹄(キョショウテイ);蹄踵狭窄のなかで蹄球の一方または両方が上方に突き上げられている状態。
症状:
  @ 前蹄の内蹄踵に多い。蹄の変形により運歩の渋滞と疲労、裂蹄、蹄叉腐爛、蹄球炎、繋皹(ケイクン)などを
    併発し易い。

原因:
  @ 蹄踵狭窄とほぼ同じだが、負重の偏りが重要な要素となる。
(4)狭窄蹄:キョウサクテイ contracted foot
病態:
  蹄角質の一部が縮小した蹄形異常(蹄踵狭窄、蹄冠狭窄、蹄底狭窄あり)。
症状:
  蹄踵狭窄(蹄球及び蹄支角を欠き間隔が接近し、蹄叉の萎縮した蹄)。
原因:
  肢勢不良、蹄の乾燥、蹄の不潔、装蹄失宜。健康蹄が蹄病に罹患した場合の多くは狭窄蹄となる。
左図:左側;蹄踵狭窄(右前蹄)。右側;挙踵蹄模式図。
右図:弱踵蹄。(左右図は装蹄学1967 JRA)

(5)弱踵蹄:ジャクショウテイ sloping heels
病態:
  @ 蹄踵の発育が悪く、その下部は内方に巻き込み、または脱落し蹄踵が著しく低くなるもの。
  A 重度のものは、蹄底の後部または蹄支を圧迫し蹄叉を被い、蹄踵の外面が他に接するようになる。前後蹄いずれにも発するが後蹄に多い
原因:
  @ 遺伝性で、特に重種に多い。蹄壁の薄い素因のある馬。
  A 広蹄で蹄踵が軟弱のもの、蹄鉄改装期の遅延、運動不足、鉄尾の過短などに起こります。
(6)蹄冠狭窄:テイカンキョウサク contracted coronet
病態:蹄冠の直下で蹄壁が狭窄したものを言います。
原因:広蹄や低蹄のような蹄壁の傾斜が比較的緩やかなものや、蹄壁の薄い弱踵蹄などは本症の素因となります。
症状
  @ 片方の蹄のみの場合は多くは跛行を伴うが、両前蹄の場合は特に運歩も強拘(きょうこう)となり、両側または
    一側の蹄冠、蹄球は
隆起し、その直下の蹄壁は陥凹弯し、一見漏斗(ろうと)状となります)。
左図:蹄冠狭窄模式図。
右図:白線裂と蟻洞の主な違い。(左右図は装蹄学1967 JRA)

2)蹄の知覚部の疾患
*蹄の知覚部とは:
  @ 神経と血管に富み、皮膚の真皮に相当し、蹄皮膜とも言います。
  A 知覚が鋭敏で肉色をし、肉縁・ニクエン、肉冠・ニクカン、肉壁・ニクヘキ、肉底・ニクテイ、肉叉・ニクサ、
    の5部からなっています。
  B この5部は蹄の角質を作り出し、蹄匣と蹄骨とを結合する働きをしている部位でもあります。
    これら知覚部に発症した疾患について以下に記述します。

(1)蟻洞(ギドウ)seedy toe
病態:
  @ 白線の角質が崩壊(ホウカイ)または腐朽(フキュウ)し、蹄壁と蹄底が分離した状態を言います。
    →保護層と葉状層・ヨウジョウソウ(内層)との間で分裂した場合蟻洞と呼びます。
症状:
  @ 前蹄の内側は白線・ハクセンに生じやすい傾向にあります。
  A 蟻洞は、白線裂から蟻洞になる場合が多い。
  B 肉冠や肉壁の角質発生障害によって蹄壁内層と中間層の発育が一致しない場合にも起こります。
  C 通常は土砂、その他の不潔物等を入れ、分裂浅ければ跛行なく、深くて知覚部に達すれば跛行を示すます。
原因:
  @ 白線角質の脆弱・ゼイジャク。広蹄、低蹄、平蹄、豊蹄、蕪蹄に罹りやすいです。
  A 白線部の多削や過度の焼付けなどの失宜・しつぎでも起こります。
左図:蟻洞(ギドウ・赤色の部分;定義は蹄壁の保護層(中層)と葉状層(内層)との結合が分離し離開したもので、白線裂よりさらに上方に波及するのを常とします。原因は舗装道路での激役、肉壁の急性炎症の継発。蹄葉炎に継発。急な湿気や乾燥。跣蹄・センテイでの踏創からの継発。(図は競走馬臨床ハンドブック1972 JRA総研)
右図:四肢太く、大きな蹄で難産予防のために疾走する重種馬達。(音更 菅野政治氏提供)

*蹄底部の腐朽・フキュウ:
蹄底部の腐朽例:(JRA総研)
左図;6歳4ヵ月齢、牝、腎梗塞。実験馬。跣蹄のために蹄負面の崩壊、蹄叉及び蹄底の腐朽。白線裂。
中央図:右側蹄;4歳2ヵ月齢、右前腕骨複雑骨折で安楽死処置;蹄底外縁の腐朽。白線裂。左側蹄; 4歳1ヵ月齢、牡、右第三中足骨開放骨折と脱臼で安楽死処置;白線の腐朽(フキュウ)と蹄叉中心溝の陥凹、蹄球部の角化亢進、蹄底角の亀裂と崩蹄、蹄支脚の切れ込み。
右図:5歳10ヵ月齢、右前基節骨開放複雑骨折で安楽死処置:裂蹄、白線裂と腐朽、蹄叉中心溝の腐朽(フキュウ)。

(2)蹄葉炎 テイヨウエン laminitis
病態:
  @ 葉状層(肉小葉あるいは角小葉とも言う)の無菌性炎症(細菌やカビなどが原因となって起こる炎症でないこと)
    で蹄の充うっ血から起こる病気です。
  A 主に蹄前面と蹄側面が冒され、蹄の角質部が葉状層から遊離してしまいます。両前肢に多発する傾向にあります。
症状:
  @ 蹄温の増加、疼痛、指動脈(繋の内外に走っている動脈)の流れの亢進、蹄甲に包まれている蹄骨の尖端が蹄底側
    に沈下
・チンカ(この状態を蹄骨の転位とも言います)、慢性化すると蕪蹄(ブテイ)と言う状態になります。
  A 特異な肢勢をとります;
 *両前発症の場合は、罹患肢を前方に出し、蹄尖部を浮かし、蹄踵で負重。同時に両後肢を前方へ踏み込み、
  頭部を高く挙げます。
 *両後肢に発症した場合は、前肢を後踏肢勢に位置し、頭を下げます。患肢を前方に深く踏み込み蹄尖を浮かし、
  蹄踵で軽く負重する肢勢をとります。
原因:
  @ 食餌性;運動不足の馬に濃厚飼料・炭水化物を多給→消化障害→腸内毒素を血中に吸収→血液分布に変調
    →蹄充血から発症します。(飼養の失敗)。
  A 負重性;蹄機の阻害あるいは蹄知覚部に刺激を加えるような装蹄、長途の輸送、過大な負重などで発症します。
    (過度の負重)。
  B 産蓐性;分娩による体力の消耗があり→消化障害を起こし→蹄充血から発症します。(過労やアレルギー
    含む)。
  C 最近の説:負重性、食事性、ストレス性、疾患継発性、外傷性、医原性(ステロイド剤多用)などにより⇔局所
    循環障害、細菌毒素(エンドトキシン)、ステロイド、生体内生理活性物質などから⇔蹄のコラーゲン分解酵素が
    活性化し⇔葉状層の表皮葉と真皮葉を接着の役目をしているコラーゲンを破壊することによって発症するとする
    説です。
  D メカニズム:
    蹄葉炎の初期発生部位は蹄真皮に発生します。次いで⇔循環障害によるいわゆる細菌感染以外の原因で無菌性壊死
    に陥ります。その過程は初期には蹄壁(蹄底・蹄側・蹄叉)の真皮あるいは角葉層部の循環障害により葉状層の
    無菌性変性から→壊死が起り、重症化していきます。最悪の場合は脱蹄といって蹄甲と蹄骨が分離してしまうこと
    さえあります。また、慢性に経過した場合は、葉状層の異常増殖により通常では見られないような蹄壁を形成し
    蹄骨を蹄底に押し下げた蹄形は蕪蹄(ブテイ)といって異常な外形を呈するに至る場合もあります。
左図:慢性両前蹄葉炎レントゲン像;5歳3ヵ月齢、牡、両前肢の慢性蹄葉炎のレントゲン像;
   蹄骨の尖端部の異常骨増生と沈下(蹄骨が蹄底に向いてしまうこと)。慢性経過のために蹄壁真皮・角葉層が異常に増生
  (偽りの蹄壁構造に成長)し蹄骨を蹄底側に圧迫しています。
右図:亜急性〜慢性蹄葉炎肉眼像。(左右図はJRA総研)
 上段:3歳4ヵ月齢、アングロアラブ、左前蹄葉炎 正中断面肉眼→ほぼ脱蹄状態。
 下段(ホルマリン固定後):2歳4ヵ月齢、牝、両後蹄葉炎:特に右側割面は蹄骨尖部のローテンションにより蹄底部穿孔性。
   蹄壁真皮の慢性増殖性炎、蹄壁と蹄骨の間に空隙形成が明瞭です。

3)蹄の知覚部及び腱の疾患からの変形蹄

(1)蕪蹄(ブテイ):pumiced foot
病態:
  @ 蹄葉炎の続発症として発生する蹄形異常を言います。別名瘤蹄(リュウテイ・コブツメ)とも言います。
  A 蹄葉炎の結果として発生する蹄形異常の状態;蹄尖壁は著しく傾斜(けいしゃ)し、突隆(トツリュウ)して
    います。蹄輪は蹄尖壁で接近し、蹄踵に行くに従い遠ざかります。蹄底は蹄骨が後下方に沈下のため、
    弯隆(ワンリュウ)はほとんどなく、かつ薄く、特に蹄底各部で厚さが不同となっていきます。
  B 白線は蹄尖部で著しく厚く肥厚し、甚だしいものは5〜10mmにもなります。これは蹄骨下垂のため
    肉小葉(ニクショウヨウ)と角小葉(カクショウヨウ))との結合が弛解し蹄角質が増加するためなのです。
    蹄質は脆弱(ゼイジャク)で欠損(ケッソン)しやすく、蹄壁の生長は蹄踵部のみに限られています。
症状
  @ 蹄尖壁の上端が極端に凹弯(オウワン)し、蹄尖壁は全体に傾斜しています。蹄輪の間隔は蹄尖壁で狭く蹄踵壁部
    で広くなります。蹄底は蹄骨の尖端が立つ状態に変位するため→蹄底各部の厚さが不同になっています。
  A 運歩(ウンポ)は軽快を欠き、蹄尖に疼痛があるため肢を前方に投げ出して歩行します。従って、蹄踵先着
    (テイショウセンチャク)が著明で蹄音も重複音を聞くことがあります。
原因:
  @ 蹄葉炎の原因である濃厚飼料の多給、水分不足、炎天下の長途騎乗、硬地上での激動によります。装蹄過失での
    蹄負縁の過削焼付けの過度などでも起こります。
左図:慢性蹄葉炎の治療後の像。(JRA総研)
上段:16歳6ヵ月齢、騙馬、アングロアラブ。両前蹄葉炎・陳旧性・慢性蹄冠炎。蹄葉炎の治療(矯正削蹄)後の両前写真です。
   高蹄。慢性蹄冠炎を発症した外貌です。
下段:同馬の正中肉眼写真:蹄壁の増生肥厚。蹄骨の沈下・ローテンションをしめしています。さらに跖沈(セキチン)の
   黄色水腫性硬化。蹄骨床側面の異常骨増生。剖検(断面像)において、蹄葉炎は陳旧性の像を示し完治していないことが
   判明しています。
中央図:蹄葉炎馬の不整蹄輪模式図(左右図は装蹄学1967 JRA)
  @ 一般に、蹄輪は蹄の成長に伴って蹄壁面に対して横に走る細い溝と、これに続く隆起部があらわれるが、この様子が木の
    年輪に似ているので、この隆起を蹄輪と言います。
  A 健康蹄は、負重により蹄皮膜の血液量が正常に循環していると、栄養蹄輪が生じ、蹄輪は蹄冠と平行して形成されます。
  B この模式図のように、不規則な蹄輪を不正蹄輪といい、これは、栄養の変調、飼養管理法の急変、疾病(蹄叉腐爛、
    蹄葉炎、疝痛など)で起こります。特に慢性蹄葉炎で著明に見られます
右図:燕蹄(ブテイ)の模式図;正中断面像と外観を示しています。

左図:クラブフッド?;症例は1歳1ヵ月齢、牡、両前蹄の蕪蹄とされ(?)、肢軸の前方破折、陳旧性トウノウ炎を疑うも
   蹄外形から臨床的にはクラブフッドとされ、両前蹄尖部で起立して歩行します。蹄先部で着地していますので蹄形は燕蹄
   とは言えないようですね。
右図:クラブフッド?の剖検像。
左側:蹄尖部過長彎曲、広蹄で蹄底は横軸長く、縦軸短い、蹄叉部萎縮、蕪蹄(?)。
右側:両蹄の正中断肉眼、ホルマリン固定後の写真。蹄壁真皮と蹄底真皮の増生。
   蹄骨の蹄底面で贅骨形成。遠位種子骨のチスト様形成(とう嚢炎を疑う)。跖沈の増生。LF::左前蹄。RF::右前蹄。
   (左右図はJRA総研)

(2)クラブフッド:club foot
病態:クラブフッドは屈腱拘縮性肢軸破折(クッケンコウシュクセイシジクハセツ)の幼駒の蹄でよくみられ、副次的な
   症状名称(シンドローム)です。
原因:一般的に、深屈腱の持続性の拘縮(コウシュク)によります。
症状:
  @ 蹄尖壁が急峡かつ凹弯し、しかも蹄関節が屈曲し、肢軸が前方破折しています。ぎこちない歩様。蹄尖のみで立ち
    蹄踵は接地しない状態です。
  A 蹄踵の過長、肢軸の前方破折、蹄尖の過剰磨耗、蹄尖壁の凹弯などの四タイプがあります。

4)蹄知覚部の疾患=蹄底知覚部の炎症・疾患=
(1)踏傷 トウショウ hoof wound
病態:蹄の踏着時に尖鋭な物体を踏んだための刺創(しそう・punctured wound)を言います。
症状:出血、膿様分泌物の流出、跛行、限局性疼痛、蹄温上昇。
原因:釘類、木片、竹片などによる踏み抜き。蹄底、蹄叉の角質が薄く湿潤な蹄に起こり易い傾向にあります。
(2)蹄過削 テイカサク
病態:削蹄の際、蹄底、特に蹄尖部に近い蹄底の外周または蹄叉の多削したものを言います。
症状:出血、跛行、蹄の増温、疼痛。前蹄に多く、装蹄後数日を経て跛行を呈し、鉗圧での検査では敏感です。
原因:削蹄失宜(サクテイシツギ)。
(3)蹄火傷 burn of the hoof
病態:蹄の火傷・ヤケド。
症状:歩様強拘(ホヨウキョウコウ)、蹄の増温、疼痛、指動脈亢進。
(4)蹄癌 テイガン canker
病態:蹄真皮の角葉層に発する悪性の慢性蹄皮炎(一般には肉叉に多発)。癌ではございません
症状:蹄叉、その周囲に肉芽様の小隆起が密集し、出血し易いです。
原因:踏創(トウソウ)による蹄真皮の損傷。慢性蹄叉腐爛の治療失宜(ちりょうしつぎ)。不潔な厩舎に
   繋養されている馬。
左図:蹄癌。(左右図はJRA総研)
 左側;右後蹄の蹄癌像。 右側;左後肢の球節部の腫大と蹄壁が脱落してしまった状態(ダッテイ・脱蹄)。繋皹(ケイクン)
    もみられます。
右図:蹄癌の蹄底部の状態;右後肢の蹄癌肢における蹄底部(主に蹄叉部)に顕著な茂贅物(モゼイブツ)の増生が見られます。

左図:蹄左側後肢の蹄癌肉眼像。(左右図はJRA総研)
 症例は7歳、種牡馬、蹄癌:蹄底全域に角葉層を茂贅性に増殖し脱蹄(ダッテイ)。
 左側:左後肢脱蹄の側面。中央:左後肢蹄底面。右側:左後肢の正中断面。
右図:蹄癌組織像。
 左側:蹄角葉層・真皮層の二次乳頭細胞(二次角葉にはまる乳頭葉の有棘細胞層)の水腫性膨化。
 右側:拡大像で、核の腫大と崩壊そして細胞の空砲化、間質の水腫。

(5)蹄底狭窄:テイテイキョウサク contracted sole
病態:蹄底の弯隆がはなはだしく、蹄尖や蹄踵壁、まれに蹄側壁が凸弯(とつわん)し、蹄の縦径を減じ、蹄冠は蹄側に
   おいて高く、蹄尖および蹄踵では低いものを言います。
原因:特に狭蹄馬の持続的乾燥、鉄臍蹄鉄(テッサイテイテツ))や厚尾蹄鉄の装着、蹄底蹄叉の多削などによります。
左図:蹄底狭窄の模式図。(装蹄学1967 JRA)
中央図:モウコのウマと子供達;多摩動物公園にて
右図:難産予防(安産)のために雪中を疾走する妊娠重種馬達。
(音更 菅野政治)

(6)挫跖(蹄血斑)ザセキ・テイケッパン stone bruise
病態:
  @ 小石などを踏み、蹄肉壁、肉底あるいは肉叉が圧迫を受けて、その部の小血管が損傷を受け、蹄底の角質に血液が
    滲み出したもの
を一般に蹄血斑(血マメ;テイケッパン)と言います。
  A 蹄底における血斑を挫跖・ザセキと言います。赤色は当初、1週間後には紫色になります。
症状:
  @ 主に前蹄の蹄底の内側、特に蹄支角の知覚部に挫傷を発生、後蹄に起こることはまれです。
  A 軽度の挫跖は跛行なく。重度は慢性跛行を示します。
原因:
  @ 過小蹄、狭窄や挙踵蹄などに発し易い。蹄底の過削、鉄尾の過短、蹄の乾燥。
  挫傷・ザショウとは;鈍性に外力が作用した時の損傷→皮膚に創傷**がなく、皮下にある場合(非開放性損傷)
  をいう。
  **創傷・ソウショウとは;損傷の中でも開放性損傷を言います。

(7)釘傷・テイショウ・クギキズ
病態:装蹄の際、誤って蹄釘が肉壁、肉底に損傷を招いたものを言います。
症状:馬は突然肢を挙上し、疼痛を示します。釘を抜く時に血液の附着。間接的な釘傷の時は改装後発見。
原因:蹄釘深きに過ぎたもの、釘の方向不良。蹄壁や蹄底の菲薄(ヒハク)なもの。蹄壁欠損甚だしいものに
   起こり易いです。


次回は、蹄機や蹄皮に関連する疾患、あるいは蹄に関係する異常歩様や関節疾患などについて記載します。楽しみにして下さい。



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